2つの住所
来月からビルバオという街に住む。ビルバオはバスク地方の中心都市で、中世以来の旧市街と、碁盤の目に区画された新市街が川を隔てて隣り合っている。家探しや何やらで、地図を見たり住所を入力したりする機会が増えるにつれて、ある意外な事実に気がついた。
まずは下の2つの住所を見比べてみてほしい。
Calle de Gordoniz, 8 48010 Bilbao, Vizcaya
Gordóniz Kalea, 8, 48010 Bilbo, Bizkaia
この2つの住所、なんとどちらも同じ場所を指し示している。というのも、上はスペイン語の表記、下はバスク地方固有の言語、バスク語の表記なのだ。スペイン語で「通り」を表す Calle は、バスク語では Kalea と言うらしい。確かにアルファベットの"K"は、スペイン語では外来語以外で使われない文字なので、非常に特徴的だ。
昔から2通りの表記があったのかと思いきや、バスク語の方の歴史は案外浅いようだ。2006年に、ビルバオ市内にある約300の通りにバスク語表記が付けられたとのこと。
しかし、現実はというと...
«Nadie dice las calles en euskera» , asegura Ángel del Hierro, taxista que lleva 14 años surcando las calles de la villa.
「通りの名前をバスク語で言う人は誰もいません」ドライバー歴14年になる地元のタクシー運転手アンヘル・デル・イエロさんは言います。
企業はバスク語表記を採用しているものの、一般市民はスペイン語表記に慣れ親しんでいるのが現状のようだ。1つや2つならともかく、300もの通りに新たな名前が付けられても、そう簡単には適応できないだろう。企業に関しては、おそらくバスク語表記の使用が法的に義務付けられているとか、そんな事情があるのだと思う。この記事はバスク語表記が制定されてから5年後に書かれているので、現在の状況はどうなっているのか、現地での生活を通して確かめてみたい。
なお、バスク語表記が制定された経緯を詳しく知ろうと、Googleでさまざまな検索ワードを試してみたのだが、情報が全然見当たらない。おそらくバスク語のことはバスク語で調べる必要があるのだろう。
ちなみにGoogleマップではバスク語、Appleのマップではスペイン語が採用されている。街なかの標識はすべてバスク語になっているようなので、ビルバオを訪れる際はGoogleマップを使うのがよさそうだ。