ü
スペイン語で「スペイン」は España と表記する。この ñ は、英語以外の言語に触れたことのない人にとっては見慣れない文字だろう。ñ における「〜」のような記号を ダイアクリティカルマーク と呼ぶらしく、このマークを伴う文字(ここでは便宜上「記号付き文字」と呼ぶことにする)はスペイン語の他にもフランス語、ドイツ語といった言語で広く用いられている。その役割や、発音の仕方は言語により様々で、例えばフランス語で「フランス語」は Français と表記するが、この ç という文字はスペイン語には存在しない。
さて、ここでスペイン語で記号付き文字がどのように使われているかを見ていきたい。スペイン語において、á や í のように、母音の上に斜め右上がりの棒がついた文字は、単にアクセント(強勢)の位置を表しているだけで、発音上の違いはない。一方で、ñ は「エニェ」と呼ばれ、n とは発音が全く違う。冒頭に挙げた España は「エスパーニャ」のように発音するのだ。
そんなわけで、スペイン語の記号付き文字は、
- アクセントの位置を表す文字:á, é, í, ó, ú の5つ(母音の数と一致)
- ñ
の6つだけだと思っていた。ところがである。
スペイン語を学び始めて3か月にして、初めて ü なる文字の存在を知った。なんてこった・・・
それは、テキストに
Es una vengüeza + indicativo
というフレーズが出てきた時だった。
というのも、ñ や他のアクセント記号に比べると、ü をお見かけする機会はかなり少ない。さらに困ったことに、ネットでは ü の存在を葬り去ったかのようなウェブサイトに出くわす。例えばこのサイトでは、わざわざ「一覧」と銘打っているにもかかわらず、ü の存在がどういうわけか抹殺されている。なぜだ・・・
そういうわけで、今の今まで ü の存在に気づかずにいた。
さて、肝心の ü の発音はというと、先ほど例文で取り上げた vengüeza は「ベンギュエサ」のように発音する。一方で guerra という単語の発音は「ゲラ」だ。つまり、子音の u を明示的に発声するのが ü 、しないのが u ということになる。
ちなみに u の上にある2つの点は、ドイツ語でウムラウトと呼ばれている。下記の動画を見ると「ウ」の口で「エ」と発音する感覚らしい。
以上、
- 記号付き文字は、各言語ごとに使われている文字と使われていない文字が存在し、さらに同一の文字でも言語によって発音が異なる場合がある。
- ñ のように頻繁に登場するものもあれば ü のようにあまり見かけないものもあり、ある記号付き文字がその言語の語彙に占める割合を調べてみたら面白そう。
- どうして英語には記号付き文字が1つも存在しないのか? 英語って、男性名詞・女性名詞の区別も無いし、どことなく「異端」な感じがしてきたのは俺だけか?
といったところだ。
今回もやはり「ヨーロッパの言語は奥が深い」といったところに落ち着くのである。